猫の足跡

この大空に、翼をひろげて
メーカー	PULLTOP
原画	八島タカヒロ　/　基井あゆむ
シナリオ	紺野アスタ / 七烏未奏　/　奥田港
点数	90点

PULLTOP新作の「この大空に、翼をひろげて」
このメーカーの作品では初プレイとなりメーカーの作風というのは考えること無くプレイすることになり体験版時点での評価の高さから購入となった作品です。
体験版時点で個人的に今までプレイしたことのないような雰囲気がしており変なことをしなければ面白くなるんじゃないかなと思っていたのですが資金的なこともあって購入が遅れたのが悔しい作品でしたね。発売日直後に触れたかったです。

簡単に結論だけ言えばこれぞ青春。といった内容です。
あまり数やってはいないですけど今までになかった感じの内容かと。シナリオ通しても読み応えがあり純粋なまでの青春ストーリーというのは非常に魅力的。作品すべてを通してみても演出、音楽、キャラの魅力どれをとっても完成度の高いゲームではないかなと思う出来になっています。


初レビューですがしっかりと書いていくのでよろしくお願いします。コメントでボロボロに言ってください。
以下、詳細。長いです。

・システム
画面は最近よくある1280×720。演出関連でやや重たいところや痒いところに届かないシステム不足等はありますが最低限必要な機能は一式あります。
細かい機能としてはワイドスクリーンでプレイ時に画面表示をカスタマイズできる、音声の左右振り分け、マウスジェスチャなど珍しい項目があるのも特徴かなと。特に左右振り分けはやはりあると嬉しい機能ですね。キャラの位置が聴覚で分かるのはともかく表現の幅が広がっているのですから使わないのはもったいないですね。

不満点としては「次の選択肢へジャンプ」がないことですね。ルート分岐もほとんどが序盤で決まってしまうこと、共通部分が長いこともあってスキップ時間が必然と伸びてしまうのは中々辛いところでした。
個人的にはセーブ時コメント機能も欲しかったかなといったところ。選択肢セーブでメモとかお気に入りのシーンとかで一言書くことがあるので不便に感じましたね。

それ以外では標準通り。プレイするのに支障はでないです。
公式パッチで機能改善等あるのでプレイ前に入れておくことをオススメします。

評価点数80点

・演出
プレイしてすぐわかりますが非常に凝っています。
立ち絵等に影響がでない範囲での動きある背景や自然な表情変化等にとても力がはいっていますね。重い原因になっているのですがそこは目をつぶるところかなと。
作品の核でもあるグライダー関連ではこのアニメーションあってこそになっています。どうしても絵が止まりがちになるエロゲで疾走感を表現できるのは非常に大きいと思いますし、見疲れしない程度なので凝っていてもサクサクと進められるのもよい加減です。
ただ会話内容と表情変化があってないところがちまちまあったかなと言うのが惜しいところ。

会話ウィンドウ周りも余計な事していなくて良い感じです。
スキップ表示などで少し動きがあるのもシステムでオン・オフできるので特に気になるってことは無いと思います。

評価点数:90点

・音楽
ボーカル曲、BGM総じて文句なしです。
この作品が出そうとしている壮大な構成になっていて広さというのを感じることができるのではないかと思います。
作品の雰囲気を固められる曲が多いく自然と盛り上がれるようになっていますね。それでいて落とす所ではしっかりと落とせているのではないかと。
ボーカル曲もOPとEDどちらも高クオリティー。俗に言う名曲というラインナップには少し劣るかもしれませんがそれでも作品にあっている良い曲です。

ボイス半聞きのせいかもしれないのですがBGMがちょっと遅れて流れる時がありちょっと残念だった点になりますね。出来がいいだけに勿体無く感じました。

評価点数:90点


・グラフィック
最初に小鳥を見た時点で思ったのは綺麗だなというのを抱きました。全キャラ通してみれば可愛らしいデザインでまとまっているという点です。
原画2人ですがお二方ともに描きに差があっていいかなと思います。サブキャラクターが多いのですがメイン、サブ共にそれぞれ個性がしっかりと出ている描かれ方で見ていて飽きないです。
SDデザインも軽いノリで表現するという点を抑えてしっかりとした魅力がありこちらも文句なしです。

CGは十分というより多い方だと思いますね。特典パッチはないのでそちらの分は枚数でしか考慮できないのですが89枚とSD19枚の100枚超えであれば満足いく量です。
割合でいえば非エロとエロでは半々か差分込みでみればエロ多めかなと。ただ非エロCGに関してはグライダー関連のアニメーションや広い背景絵を使っていると感じたのでバランスはちょうどいいのかなと思います

立ち絵では双子に関しては不満点がいくつか。
同じ絵を使っているせいで細かいところで見れば違いは分かるのですが大枠が同じなため並んでいる事の多さも合わせて何とも言えない微妙な絵面になることが多々あった感じです。
後は体の向きが偏っているかな、と。
背を向け合って真ん中に話しているというような立ち絵はやっていて気になりました。
差分も多くて動きがしっかりとあっただけにそこが残念です。

評価点数:85点

・シナリオ
非常に完成度の高いシナリオになっています。
まず全体を通してみれば一貫性のある内容、読み応えがあるがサクサクと進めることのできるボリューム等純粋に読み物としてのクオリティー自体も高いですね。

内容としては青春です。等身大の学生による現実的な表現とエロゲ的な要素が邪魔しない程度に混ざっているのでゲームとして軽い物を読みたいと思う方にもある程度現実味がある物が読みたい方など幅広く勧められる内容となっています。
ノンフィクションとは比べられないのですがそれでも人間味溢れた内容になっているのは大きなポイントです。

まず主人公が中々格好いいなと。
運動系男子というせいか行動力あるし決断力あるしでニブイとかそういった事はなくアクティブなキャラになっています。
最近のラノベとかにいる主人公を毛嫌いする方は大分好きになれると思います。

ヒロイン個別ルートではどのルートでも同じ結末に対してそれぞれしっかりと差が出ている物になっています。
結果が同じ物だと過程も似たり寄ったりになるのではないかなと思っていたのですがキャラ付けがしっかりとできているからか同じ事をしているにしてもかなり違った視点や構成になっていることも大きなポイントです。
構成を変えていると言っていても軸はぶれていないどころか他ルートの補完までできていますね。
シナリオがロック式になっているのもネタバレ避けであって徐々に物語の裏が分かるのも魅力の一つです。
部活に打ち込む青春系に恋愛ストーリーを合わせていきつつエロゲにありがちな展開も外さないという要素が綺麗に収まっています。それでいてルート毎に明確な違いがあるため全キャラ飽きずに一気にプレイできました。

キャラの告白シーンや付き合い後に関しては心躍る展開があったな、と。
アクティブな主人公なせいで本当に格好いいです。いいぞもっとやれ。

Hシーンも各キャラ4回。双子はそれぞれ2回と2人で1回。これだけあれば十分だろといったところ。
予約特典のディスクでシーン追加がありますが持ってないので。
実用性があるかないかで言えばある方だと思います。構図が中々に良いかなと。

ここまで熱い青春ストーリー物は珍しいと思えます。もちろん青春だけではない物語となっているのですが所々であるご都合主義的な展開に関してはそういうものだ！みたいな感じで流せてしまうぐらいには作風がしっかりとしていて読み手を納得させる力があります。

ご都合主義的な所でもうちょっと粘って欲しかったと思う所こそありますが先程の通りそれすら気にならない出来になっています。

評価点数:90点

・まとめ

細かいこと捨てて素直に楽しめるゲームになっています。
重すぎず、軽すぎずそれでいて楽しく読み応えがあるという非常にバランス良く高クオリティーなシナリオ、個性あるキャラ達、場に合わせて聞き心地の良いBGMと総じて満足度の高い構成になっています。

特筆すべきはやはりシナリオ。今までにない熱い青春ものは一読の価値ありです。
PULLTOPファンとかではないので過去作とかを気にせずにプレイできたのもあるとは思いますが非常に良い作品になっているかと。
一部気になる点こそありますがそこは次回作で頑張って欲しいところです。

総じてバランス良く作られていてクセが無い上に今までになかった内容になっていることもあってエロゲ初めての方だけでなく数やってきた方にもオススメできると思います。
これは是非多くの方にプレイしてもらいたい作品です。