世界観はタペストリーの舞台と同じ土地でその数十年後のお話。タペストリーとは一部ヒロインが関係しておりそこにおとぎの国という要素、昔買っていた犬が人間になって蘇ったというファンタジー系の今作。原画も新しい人を起用するなど思い切った展開をしてきた今作ははたしてどのような作品に仕上がっているのでしょうか。
そこで由紀はしろと名乗る少女と出会う。少女は自分を昔飼っていた犬のしろだと言い夢の中だけでなく現実の世界にも現れ10年前と同じように由紀と一緒の生活を始める。おとぎの国と現実世界の両方を巻き込んで彼らの物語は始まる。
【システム・構成】
システム面。全体的に動作がもっさり気味で起動と終了が遅いなと感じました。終了時はゲーム終了でシステムボイス流れるのですがこれがカットできなくてボイスが終わるまで画面が消えないのが今回起動を繰り返した自分としては非常にストレス貯まるところでした。
もう1つは選択肢スキップ関連がないこと。ルート分岐が前半からあって共通部分が多いって感じなのでその間が全部早送りだったのがちょっと手間なところ。
気になったのはこの2点。セーブ件数が200件あったりコメント機能もあったりと設定全般でも結構細かく調整できるのは良いところです。
構成
最終分岐まで通して3時間ぐらい。セーブが日付またいで飛び飛びだったのでこれも曖昧な計算。そこから個別が2時間ぐらい。2週目以降は違う選択肢をあたっていく分を込めて2時間半ぐらいでしょうか。全部で10時間ぐらい(かなりアバウトな計算をした)
特に追加ストーリーやアフター等々はなし。
おすすめ攻略順というわけではないですがストーリー的には姫花→アウロラ→吾妻→しろが個人的おすすめです。
【サウンド】
収録曲数28でボーカル曲が3曲、OPとEDに挿入歌となっています。
作品がおとぎ話のようなテーマ性があるためかアップテンポな曲中心、公開されているOPソングのようなものが全体的に使われていると考えて貰ってよいですね。
特徴的な物として猫ふんじゃったをアレンジしたような曲やしろの鳴き声が入っている物、あと鈴でいいのかな……シャンシャンとした音が心地よい物がいくつかありましてこの辺りが作風と合っていて非常に良いです。
BGMがアップテンポで騒がしいのと対象に挿入歌とEDは非常にしっとりとした曲で作品の場面も合わせて物語の感動を引き立てる素晴らしい曲、ボーカルはayumi.氏ということもあって高い完成度です。是非聞いて欲しい曲達ばかりです。
【演出・デザイン】
演出関係
縦書と吹き出し、漫符やころころ変わる表情や立ち絵の位置を調整しての場面展開が目を引くところです。特に立ち絵の動きは多く動くと止まると言っているキャラは基本的に動き続けています。
アニメーションを使っているシーンもいくつかありアウロラとしろルートは後半のアニメーションを用いた表現がとても綺麗なのが印象に残っています。特にアウロラルート。
ただアニメーションの関係なのかシステム面でも言った動作の重さや同じアニメーションを何度を見せられる事がありテンポ悪いと感じるところも多々ありました。急いでやらなければ丁寧な表現ともとれるのですけどね。
立ち絵にはアニメーションは使われていませんがしろを筆頭によく動くので立ち絵だけでも画面に飽きないというのはかなり良いところで楽しんでいる様子や困っている様子が見て伝わってくるのがプレイしていて楽しいと感じられれば演出不足とは思わないでしょう。マグロとしろに注目ですね。
デザイン
おとぎの国方面がかなりの密度で凝っていると感じましたね。サブキャラ達もそれぞれ特徴が出ていますしおとぎ話ならこんなデザインになるだろうという事をしっかりと守ったデザインにまとまっています。
ところどころに使われている犬の足跡なども共通した印としてしろの物語なのだと意識させるポイントになっている事も良いところ。
システム周りは黄色基調でずっと見ているとちょっと疲れるかな。見難いわけではないです。
【グラフィック】
原画はp19氏とサブ原画に夕薙氏、SD担当が丸ちゃん。氏の3名が担当。そうは言っても基本的にはp19氏の単独と言っても良い感じになっています。
CGは77枚で全体的に差分多め。個別は多くて23枚、少なくて15枚で4分の1程がHCGという感じの割合。各キャラ4シーンから5シーンってところ。
立ち絵は服装バリエーション少な目で表情差分と漫符でバリエーションをつけているといった感じで改めて見てみると素材は少なかったって感じですね。
CGの少なさは中々に致命的。本当にCGが出てこないのです。特に吾妻と姫花は3分の1ほどがHCGとなっており日常シーンが物足りないです。
それとCGでバックが大きすぎて遠近感というか全体像のデザインが狂っている用に感じるものがちらほらと。例としては大きすぎる窓や扉など。
ただトークショーで言っていた通り表情の書き方はどのキャラも非常に丁寧。立ち絵の方は安定している程度ですがCGになった時の表情が可愛い!
話はちょっとそれますが原画のp19氏を知ったのは富士見ファンタジア文庫から出ている『姫狐の召使い』がきっかけでその時に可愛いくて柔らかい表情描く人だなぁと思って以来ファンになったという経緯がありまして。今作はそういった柔らかい表情に期待していたのです。
話を戻して。そういった意味でCGや差分で柔らかい表情を堪能できたという点では費用に満足のいったグラフィックになっています。今後は構図にもっと力を入れた絵を描いて貰えるともっと良くなるので今後にも期待をしていきたいです。
【ストーリー】
吾妻ルートはタペストリーの主人公を追いかけるようなストーリーですがタペストリー自体は知らなくても十分楽しめる内容。他3人はおとぎの国を中心に色々する話になっています。
共通ルートは本当にただの日常のみとなっており舞台がおとぎの国だったり現実だったりところころ変化していき基本的にはしろと過ごす日常というものが中心。個別に入ると一気に変わるわけですが1人を除いておとぎの国と現実を上手いこと結びつけているお話でおとぎ話風のストーリーになっています。
吾妻とアウロラルートに関してはちょっと趣旨が異なっています。吾妻ルートでは父親、アウロラルートではアウロラの悩み苦しみをそれぞれ想いの力で解決しゴールへ辿り着くというストーリー。
しろは本作最大のテーマである奇跡に対して向かっていくストーリー。こちらも想いというのは大事にしているのですが他ルートよりもその点が非常に強く本人達だけでは解決できない点が出てくるのも重要なところです。
ストーリーは通しておとぎの国で起きるちょっと不思議な物語というのが軸であり真ルートであるしろではそこに奇跡という要素が深く関わっているというところ。おとぎ話として読むとどれも非常に楽しめる構成です。
姫花はちょっと論外です。姫花が論外というよりはこの話だけどうにもおとぎの国という設定を生かしていない事と主人公が最後まで情けなさすぎてまるで別人だし認識がある人物を初対面かのように言うなどそもそもの構成がおかしいです。
これはおとぎの国に深く関わらない現実世界中心になった場合のifだと思った方がいいレベルです。
Hシーンは短いよ。各キャラ3シーンです。ただHシーン以外のアウロラが良い感じに発情してエロいです。
【総じて】
本作しろぴか、最初は絵師買いでストーリー面白ければ得だなぁ程度に考えていたものだったのですが蓋を開けてみれば1人を除いてどれもテーマ性がしっかりしているし何よりしろが可愛くて楽しい作品となっていました。
グラフィックの構図や動作の重さ等プレイの端々で気になる点が多く不満に感じるところが多くまだまだ改善できるところもあるのが非常に残念なところ。
しかしストーリーはどれもどこか不思議な世界を舞台にしたおとぎ話としての構成はよく、メインヒロインのしろがどのルートに行っても埋もれないという点もありこの点は本作の魅力でしょう。
特にしろルートに関しては個別に入ってからの展開は涙無しには語れないもので恋心以上の2人の絆を描いている素晴らしいストーリーです。
ただストーリーが面白ければ良いだけじゃなくグラフィックの構図を煮詰め、動作やシステム面などにも力を入れて快適なプレイ環境とゲームのキモであるイラストもより高いレベルを目指して欲しいと感じました。このチームでの次回作でより良くなることを期待します。
最後に、本作ですが動物を飼っている人に是非やって欲しい作品です!
エロゲをおすすめする層として何か間違っているような気がしますが決して獣姦物だからとかそういう意味ではなく、大切に飼っているからこそこの作品を通して得る物が確かにあるはずです!
いい笑顔です